Standard の実力

注いだグラスを差し出される時、そのグラスの軌道を追って漂う香りに心を奪われることがある。とても心地よいそのひと時。

この The Balvenie Founders Reserve もそんな時を与えてくれる。
麦芽ジュースの酸を含んだような香りが、快活で爽やかに鼻先をくすぐる。そして、イチヂクのような甘い香りが柔らかく広がる。

 

200808231.jpg思うに、私がモルトを飲むようになった頃、オーダーする頻度が高かった。当時は、クレインに限らず、ちょっとしたBarには置いてあったと思う。ボトルが変わってしまってからは、当然のように置き換わっていき、次第に見なくなっていった。今となっては飲むのも久しぶり。
それでも、変わらない美味さに笑みもこぼれようというもの。
当時のボトルシェイプは一般的なトール瓶とは違い、なで肩でその長いネックの優美なライン、トップの真紅のキャプシールがそのフレーヴァーと相まって官能的に感じたものです(ちょっと言い過ぎか?)。

一口含んでみると、真っ先に甘い香りがフワッと口の中に広がる。落ち着いていながらも軽やかな口当たり。しなやかなアルコール感がしっかりとした輪郭を作っている。カカオのフレーヴァーも感じられ、それらがしっとりと舌の上に乗っかっている。
飲み口とともに、スーッと体の力が抜けていき、肩も落ちる。口の中で転がしながら、フレーヴァーを楽しむも、勿体無いかな、気がつくと飲み込んでしまっている。
アフターは舌の上にはキリッとしたビター感が残っている。喉の奥の方からはほの甘い果実の蜜のようなフレーヴァーがゆっくりと漂ってくる。オレンジのような香りも感じられ、細く柔らかい繊細な揺らめきが口のゆらゆらとしている。
「以前は、これがスタンダードだったのに」
恨み言のひとつも言いたくなる。

これを好んで飲んでいた頃、クレインとの出会いもあったなぁなんて、ちょっとした感傷もあったりする。
Clynelish のダブルカラー蒸留所ものや、Oban 12年のクリスタルデキャンタ、Aberlour の8年角瓶カスクストレングスやVOHM、コルクキャップやスクリューキャップのバリエーションを飲み比べてああだこうだと言ってみたりしていたトール瓶のCardhu、たまにはロウランドも飲まないと、とか言いながらオーダーしたRosebank。
お金がある時にと自分に言い聞かせながら、The Macallan の52年や Springbank の West Highland なんかを眺めていました。

 

200808232.jpgそんなこんなで、こなれたコニャックのように品良く優しいフレーヴァーに酔っている。中盤に差し掛かってくると、改めて麦芽の香ばしさがサッパリ感を伴って現れてくる。
それが、また甘いフレーヴァーと交わって一緒になっていく。しっかりとしながらも強すぎず、おだやかだけれどもしっかりとした芯が感じられる。

あなたも、一度(それとも、久しぶりに)お試しになってはいかがでしょうか。

西郷


2008年08月23日
トップへ戻る

ページの終了
ページの終了