モデル系

師走だからというのも相俟って、このところずっと忙しかったので、ロクにシガーも吸えないまま。
人が「忙しいから」と言う場合、単に時間的、作業量的なことを説明する場合のほかに、裏に色々と含みを伴う場合が多いよう。言い訳だったりする以上に、自己満足や優越感だったり、ある種の自己欺瞞や自分への言い聞かせ、諦観だったり。今回の私の場合はちょっと自己憐憫か。
さて、そんなこんなの状況なんぞ何とでもなれと、痺れを切らしたかのように久しぶりにシガーを燻らす。

COHIBAのLANCEROS。細身で一段と長いVitolaは、見た目がとてもエレガントで女性的。クールな女性がゆっくりと燻らせていたら、こっちがクラッとしてしまいそうなフォルム。
そんなルックスのシガーは、ちょっとライトかもしれないけれどドライで、なかなか手の内を明かしてくれないようなタイプかと勝手に想像してしまう。ちょっとツンとしたモデル系?
さて、火をつけると、乾いた香ばしさがたつ。口に運んでひとふかし。オイリーでドライな印象を受けるが、吸い口は軽めで、吸い手に全くストレスを感じさせない。燻らしていると直ぐにオイリー感は消え、乾いた葉の香ばしさが軽やかに続いていく。中程度にローストしたコーヒーやビターチョコのアロマもベースに感じられ、雑味の全くない余韻は品の良さを印象付ける。

合わせたモルトは2種類。80年代前半頃に流通していたGLEN ELGIN 12年と、Society の SCAPA(Distilled Apr 80 / Bottled Oct 93 / 58.8%)。


200901011.jpg先ずは、GLEN ELGIN。個人的には最初なり途中で軽く引っ掛けるのには好きな一杯。4~5年ぶりに店頭に出したそう。そんなに飲んでなかったんだ。
LANCEROSより色がちょっと濃い目のモルトは、フレーヴァーの印象がこれまでのものより今風によっているように感じられた。
色から受ける印象ほど甘みは強くは感じられないが、シガーのフレーヴァーがELGINをよりクリーミーにする。そして、フィニッシュにはちょっとしたビター感を上乗せしてくる。クリーミーな柔らかさの後の、この苦味が一筋縄ではいかないしなやかな個性を演出してくる。アダルトなELGINといったところか。

次はSCAPA。樽出しのアルコール感が心地よい。この相性は非常に良く、合わせることで全体の印象がバランスよく大きな円になっていく。
シガーの乾いた香ばしさをアルコール感が骨格となって内側から支え、モルト自体の麦のフレーヴァーと良く馴染む。
サラッとした味わい、軽やかだけれどもちょっとトロリとした粘質感のある甘み、そして、それを支えるアルコール、麦芽の香味などといったそれぞれの要素の間に自然とシガーの香ばしさが入り込んでいき、全体の中に溶け込んでいる。なかなかのマリアージュ。

今回のVitolaは、中盤に香りがふくよかに大きくなる一面も見せてくれるが、全体的には、ライトで雑味、引っ掛かりがなく、葉の乾いた香ばしさが綺麗な余韻となって細長く残るというところが一貫したものなので、入門編にも良いかと思われる(ただ、丈が長いので、流石に最後の方はちょっとヘヴィーに感じられますが)。
そしてまた、贅肉を削ぎ落としたスマートなものなので、着るものによって色々な表情を見せてくれるモデルよろしく、色々な銘柄と合わせて楽しめる一本としても重宝するのでは。

休みの間に、いつもより長めの時間をかけて、ゆっくりと楽しんでみてはいかがでしょう。

西郷


2009年01月02日
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