最初のやつ


このところラムやリキュールとテーマがモルトから離れていたので、モルトに戻したいと思い、何にしようかとバックバーを眺めながら考えていると、1本のボトルに目がとまる。本当に目の前にあった一本。
GLEN GRANT 25年 SILVER JUBILEE 1952-1977 はその名前になぞってか、ラベルが銀色。言わずと知れたエリザベスⅡ世の即位25周年記念のボトル。
ちなみに、他にはシルバーのものはなかったような...

古い(?)クレインの常連の方々はご存じの通り、以前、年に2回やっていた試飲会の第1回目のボトルがこれ。


200907221.jpg試飲会自体は回を重ねる毎に鶴見さんの性格を反映して、主役となるモルトがいくとこまでいってしまい、発展的解消(?)ということで今は行われてはいませんが、そんな会の先駆けとなったもの。
ただ、私はその時はまだクレインの存在さえ知りませんでしたが...

さて、そんなボトルの久々の1杯。
グラスに注がれた色はやや濃いめ。滑らかな琥珀に、ややダークグリーンがかったトーンが見てとれる。カウンターのライトに照らされたその色調はそこはかとない艶やかさを湛えている。
グラスを軽く回す。中の液体が回った際に出来る上端のラインから落ちてくるはずの脚が、なかなか落ちてこない。エキス感の強さがとても期待される。そもそもグラスを回した時のゆったりとしたところからもエキス感は想像がつくにせよ。

香りはシェリー・カスクに由来する甘いもの。粘質感があり、優しい当たり。程良く熟成したコニャックのようなニュアンスも持ち合わせている。が、しっかりとしたアルコール感が骨格を作っている。そして、アルコールによる鼻の粘膜への刺激と共に、適度な酸も感じられる。
ただ、そのような刺激も追って感じられるけれども、最初に感じられる甘みのニュアンスがヴェルヴェッティな肌触りで臭覚を支配している。その優しく滑らかな香りは、鼻から入ってやがて首から上全体がシルクで包まれたかのような錯覚さえ引き起こすよう。
更に、その熟成し落ち着いた香りの中には、酸味に導かれるのか、若干のトロピカルフルーツやマンゴーのようなフルーツ感さえ感じられる。
本当に、香りだけでも十二分に楽しめる。

 

200907223.jpgグラスを傾けると、スルッと鋭角的に口の中に入ってきた。
香りの感じ方とは逆に、最初にアルコールの刺激が軽く感じられたが、直ぐに香り同様のシェリー感のある甘みが上に乗っかってくる。ネットリとしたオイリーなタッチが口の中で輪郭を膨らませてくる。そこに酸味がアクセントとなってバランス良く同居している。
これらの感覚がどちらかという縦系に広がっていくのに対して、熟成感が横に広がっていく。そして、それぞれが段々と一つのフレーヴァーに纏まっていくのを意識的に感じることができる。
モルトが喉を通り過ぎていく。すると、舌の上に燻された麦芽の香りが後味となって立ってきていることに気付く。そこに若干の苦味が切れ味の良さを演出している。舌の奥の方では、細く長く麦の香ばしさが適度なシットリ感を伴って余韻となって漂っている。
暫くその余韻に感覚を委ねている。すると、良く熟したフルーツの落ち着いたフレーヴァーと、燻された麦芽の香ばしさ、追って漂うコーヒーのようなフレーヴァーも全てがうまく絡みあい、鼻腔に抜けていっている。

このようにその時々の印象だけを取り上げて書いてみると、やや重めな酒質と思われるかもしれないが、実はボディ自体はミディアム・ライト。
香りやフレーヴァーにはマッタリとした非常に落ち着いた味わいとしての印象を受けるが、味わい自体は実にスッキリとしていて軽やか。
飲後、余韻も湿ったようなシットリ感が全体を覆っているが、やや感じられる苦味が、最終的な印象をドライな方に持っていく。
最初は甘めだが、最後はややドライめ。この移ろいが、あまり意識していないと気がつかないうちに起っている。そんな、飲み手にそんな気負いを感じさせずに、サラリと飲ませてくれるところが、軽めながらもしっかりと「旨い」と思わせる一杯になっていると思う。
あなどれなくもあり、面白い一杯。
流石。

ちなみに、このGLEN GRANT SILVER JUBILEE はデキャンタと一緒に販売されており、それを私がワインのデキャンタージュに使っていたのは、今は昔です。


西郷


2009年07月22日
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