Harvest
今年も昨年同様に勝沼へ葡萄の収穫に行ってきた。
朝4時起きで、前泊の甲府から5時半の始発で勝沼へ向かう。電車の中では、勿論、乗り過ごしのないように気遣いながらも、うつらうつらとしていた。ただ、早朝の薄紫に映える車窓からの風景が次第にいつもの色合いに変わっていくのは良いもの。そして、勝沼の駅に降り立って盆地の向こうにある山際が透明な空気の中に立ち上がっているのが見えると、えもいわれぬ清々しさを感じる。
朝6時に鳥居平の畑に集合し、作業を開始する。朝弱者としては、なかなかのハード・スケジュールだけれども、冬から春、夏へと今までの地道な作業はこのためだ。
ここの畑は4区画からなり、メルローを主体にカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドの所謂ボルドー系の品種が植えられている。
今回の収穫はメルロー。収穫後は、晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンの青粒取りを行った。
ちなみに、果実の糖度やph値、糖酸比、メトキシピラジン由来の青みのあるフレーヴァー(ピーマン臭)の消え去り具合、それに天候などにより総合的に収穫の時期が判断されるが、メルローとカベルネ・ソーヴィニヨンの収穫には約1ヶ月の開きがある。
さて、今年の出来について我等が師匠(一連の作業のインストラクター)から話しがある。夏までの日照時間、降雨量、気温では中庸な感じの年という見方だったが、その後の結実期を経てベレーゾンと呼ばれる着色期から果実がグッと育つ間の気候が期待以上に良かったため、結果、とても良い年になったとのこと。実際には糖度などは期待値に若干届かなかったものの、充分な値には届いている。その話しに、私同様に収穫に来ている皆からも「おぉっ」と期待の声が上がる。そのため、収穫にあたって、選果をしっかりやって量より質という方針でいく(前年も基本はそうだったが、より思い入れが入るというわけ)。
収穫が始まり、葡萄の連なる間へ入っていく。向こうに見える山肌が、青い空の下、豊かな深緑を湛え目に心地よい。気がつくと眠くない。
良く実っている房を切り取る。充分に育っていない小さい実や、色づいていない青い実を確認し一つひとつ取り除き、最後の手入れをして籠にいれていく。
幾つかやってみると、昨年の房と比べて明らかな違いがあることに気づく。一つは、実が皆ちゃんと黒くなっている。昨年は黒くなりきれずに赤いものも多くあったが、今年は黒い(それでも赤みのある実は、どうしても出てしまう)。もう一つは黴が生えていたり、病気にかかっている実、傷のついている実が少ない。特に黴や病気については、担当した所では、ほとんど見なかった。その辺は、これまでの除葉や摘房、摘芯などの地道な手入れが功を奏したのかもしれない(自賛モード)。
単なる比較でも、確かに今年の方が葡萄は良いのが分かる。
収穫をしながら、確認と称してちょっと粒を食べる(結構、重要なんです)。葡萄のフレーヴァーが口に広がり、甘くて美味しい。果皮もしっかりとしているし、種を齧ってみてもちょっと前まではギシギシだったタンニンがややマイルドに感じられる程度(完熟するとナッツのような香ばしさが出る)に変わってきている。
持ち場が終わり、周りのヘルプをしたりもして、葡萄が一杯(正確には9分位)になった籠がたまると、計測の方へ持っていく。そこでまた最後のチェック。陽の当たり方で、葡萄の色の見え方も変わるので、改めてチェック。意外に落とさなければいけない粒も多かったりする。
日差しが強くなってきて、ジリジリと日焼けをしそう(実際、少し焼けた)。ちょっと体だけは葡萄の樹の陰に寄せてみたりする。
チェックのため籠から房を取り出したり、最後の手入れ後に籠へ戻したりしていると、落とした葡萄の粒を踏むことになる。ブチッブチッと靴底に感じられる弾けた感触が気持ち良い。更に、そこから甘い香りが立ち上がってくる。日差しがキツイけれども心地よい作業場だ。
暫くすると足元の踏み潰された葡萄が発酵しだしているよう。果実の甘い香りと一緒に仄かな酸味も伴った発酵臭が上ってくる。
「天然酵母だなぁ」なんて思ったりもする。
全ての計測が終わる。今年のメルローの収穫は1.3tになった。当初、予想では1.5t位を期待していたので、若干下回る結果に。ただ、それだけしっかりと選果をしたということもいえる。
多分、予想を下回った分は、僕らの足元で発酵していたんだろう。それも天使の分け前。
西郷





