カストリ
最近はカストリ・ブランデーなどと言われることはなくなった感のあるグラッパ。「かすとり」という言葉自体もかなり時代がかった死語になってしまい、たまに目にする場合も文字通り「粕(糟)からとった」という本来の意味になっていっているよう。
でも、同じカストリ・ブランデーに括られるマールをみるに、フィーヌの方が上的な捕らえられ方をされているところは、やぱっりカストリなのかなぁ、と思ったりも...
かく言う自分も、「かすとり」という言葉を知ったのは、社会人になってから。言葉の背景にある時代も時代だし、子供や学生にもあまり縁がない。
随分前のこと。版画をやるといって会社を辞めた一つ上の先輩の初めての個展にあった作品のタイトルに使われていて知った。で、その時に「かすとり焼酎」や「かすとり雑誌」という言葉と共に意味を教えてもらったのを覚えている。
さて、そんなカストリという言葉を使われなくなったグラッパも、クレインで扱い始めた頃は試行錯誤といか出会わないというか。封を開けては消え、開けては消えという1本のサイクルが短いなかで、色々とあったように記憶している。
その中、ある程度落ち着いた形で提供されたのがBertaのヴィンテージ物。色の濃い木箱に入ったボトルは、なで肩だったり、碇肩だったり、洋梨の形だったりとそれぞれに色々な形をしたもので、まぁ気合の入ったものだなぁと思ったもの。中身も、樽での熟成が入っていてとっぷりと大きく構えたもの。
葡萄とポットスチルのような器具がくっついたトレードマークも、葡萄を一番に考えて作ってるんです、というメッセージに勝手に捉えて(その真意は知りません)、個人的には好感の持てるもので、そこからも飲もうという気にさせられた。
暫くはBertaを飲む機会が多かったものの、そこで一気に流れを変えたのがRomano Leviのボトル。
Bertaのような「いかにも高そうでしょ」という佇まいとは正反対。カストリの言葉がちょっと頭を掠めずにはいられないが、ラベルに書かれた手書きの字からは、これはカストリではなく、職人によってちゃんと作られた一本だという趣きが押し付けがましくなく自然に主張され、堂々とした風格をもって醸し出されていた。
また、グラッパでヴィンテージの書かれているものがBertaくらいしかなかったので、そこにもある種の期待が寄せられた(わざわざ手で書かれているわけだし... とはいえ、樽番号やボトルの通し番号が手書きされているモルトでも大したことのない物は多々あるけれど...)。
そんなこんなで、最近入ってきたものを幾つか試してみた。
今回入ってきたもののなかには、瓶形が珍しいものも。ブルゴーニュやボルドーのワインボトル風のものは初めて見たもの。
そんななから先ず、Grappa 95年 51゜を。ブルゴーニュ風のなで肩のボトル。
グラスに注がれたグラッパの色は薄く、黄色と琥珀色の中間くらい。色が薄めの蜂蜜のようでもある。液面の端は透明に近いか。手元で見ると黄緑色のニュアンスも入っているように見える。ツヤのある輝きが嬉しい。
香りは、固いアルコール感が最初に感じられる。若々しいレヴィにあるカッチリと固まったエキス感。白っぽい果物の蜜のような香りや、ハーブ、漬物に感じられるような熟成感と酸のニュアンス、白胡椒のスパイス感、胡瓜のような青っぽさも奥に感じられる。
口に含む。
最初にほのかな甘味が丸まって舌の上を転がっていくと、後を追ってアルコール感、酸味が立ってくる。
まだ若々しさを充分に残している。アフターにやや青みがかったニュアンスとスッキリとしたミント系のハーブ感が清々しい。
グラスの残り香を嗅いでみるとアールグレイのような香りも感じられる。
一般にも気の利いた酒屋や大手では売られるようになったLeviですが、90年代となると中々出てこない。
クレインでも2000年代を飲むことが多いので、久々な気もする。
まだ15年。若さがまだ残っているけれど、そこに少しずつ先に向かっているような片鱗がそこかしこに見えるのが楽しい。
色々なフレーヴァーの要素があるのに、だんだん纏まりつつある。そんな過渡期を見て取れる一本。
そして、それをもう少し遡ってみる。
Grappa di venti anni 92年 56゜を次に。
書かれているところからすると20年ものとのこと。となると、少なくとも蒸留は72年より前ということになる。
色は、とっぷりとした琥珀色。見るからに樽で熟成したもの。
グラスに注がれたものを見ると、こちらも緑色のニュアンスが奥のほうに入っているように感じる。深みのある照りが艶やかで、旨みを湛えている。照明を通してグラス栄えのする色っぽさがある。流石の「熟成品」といった風情。
香りは、こなれて複雑みが出ているが、線はしっかりしている。枯れたアモンティリヤードのようなフレーヴァーも感じられる。上品なキャラメル、ハーブといった香りも。
落ち着いているけれど深みのある香りがアルコール感とマッチして、鼻先でチャーミングに踊っているようでもある。そこからはバタークッキーのような香ばしさも。
更に時間が経って落ち着いてくると、もうコニャックのようになっている。樽からくるキャラメルのような甘い香りがよくこなれている。
実際に味わってみると、コニャックのようでもある。アルコールに由来するであろうキリッとした酸がコニャック様の味わいにアクセントをつけ、ピンと張ったような一種の緊張感を引き立てている。アフターは複雑みを持った余韻が鼻腔の中で燻っている。よくこなれた柔らかい樽香がほのかに余韻を下から支えている。
これもとても面白い一本。
同じ90年代ヴィンテージでも、ここまで性格を違えてボトルの中に表現されると、もう堪りません...
で、次ですが、長くなってしまったので、今回はここで一息。
西郷





