ブレンデッドの妙
「モルト流行り」という言葉は聞くが、「ブレンデッド流行り」という言葉は聞かない。
世界的にもウィスキーのマーケットシェアをみれば殆どがブレンデッドなわけで、それも当然。(1990年代前半には約95%をブレンデッドウイスキーが占め、2000年代後半にはシングルモルトの占める割合が15%を超えるようになった < Wikipedia 情報だけれど、大きく間違った情報でもないと勝手に思ってます>)
そんなわけで、「モルト流行り」の言葉の背景には、近年のウィスキー需要の縮小化傾向とは逆に、まだまだ小さい割合ながらモルトがシェアをやや上げてきたことを捉え、まだロングテールにもなっていない部分の購買を喚起・助長するために作られたコピーだろうということは、容易に想像もつく。
つまり、「流行り」といわないと売れないものが多いということで、「流行り」といわれているうちは定着していないんだろうということ。だから、ブームは直ぐ過ぎる。
しかし、個人的な印象でいうと、「モルト流行り」という言葉は、それこそ20年ほど前からちょこちょこと囁かれ続けているように感じる。
多分、ウィスキーの範疇では他に売り物はバーボン位しかないわけで、売りのキッカケもないから別のマーケティングもしようがないというのが本音かな、と勘ぐってみたりする。
最近は、ハイボールという売りが復活したようだが...
私個人については、90年代前半のモルト流行りの頃に味をしめた愛好家。ただ、ブレンデッドばかり飲んでいた時期もあったりする(愛好家としては、一度は通る道か)。
そこで、久しぶりにブレンデッドも良いかな、と言うと、鶴見さんが出してきたのが、The "Royal Household"とThe "Strathconon" Pure Malt 12year。共に、James Buchananによるもの。Householdの方は、折角だからとティンキャップも併せて。
StrathcononについてはMalt枠だが、vattedということで今回は広義のブレンデッドとしてご了承頂きたく。
さて、出されたこっちは「これで終わりですね」と一言。ここを出されては、もう札止め。
所謂、「The付き」というやつ。久しぶりに見て気づくのが、両方共に名前をダブルクォーテーション(""←これ)で囲まれていること。「The無し」はダブルクォーテーションもなくなっている。何か当時のメーカーの意気込みを感じずにはいられない。
というわけで、飲みましょ。
ちなみに、今回、シガーと合わせてみたところ、組み合わせでこれほど違うの?という面白さも改めて発見。シガーの方は、Romeo Y Julieta Edicion Limitada 2009で。
The "Strathconon" Pure Malt 12years
今回、ネットで調べてみると、別のボトルは色々出てくるが、このボトルはなぜか出てこない。まだ、The"Royal Household"の方が出てくるし、語られている。意外に見逃されているボトルかも。
それはそれとして、テイスティング。
色は蜂蜜のような色調で、やや薄め~中程度の濃さといったところ。端の方はほぼ透明。本体部分は艶やかな照りがあり、脚も長めで粘度の高さが見てとれる。
香りを嗅ぐと、最初に爽やかな黄色っぽい果実の香りと湿った木の香りが混じり合って感じられる。爽やかさのある反面、熟成感のある落ち着いたものでもあり、香りの底をドライなアルコール感が支えている。スマートでしなやか。
口に含むと、しなやかだが優しく麦の香りが高く立ちあがってくる。口当たりは柔らかく、ややコンパクトに纏まっているが、輪郭のはっきりしたもの。その香ばしさに甘みが混じり合い、心地良く飲むことができる。
余韻は特に長いものではないが、柔らかい甘みとアルコール感が木の香りを伴って続く。また、アフターにオイリーなニュアンスが口の中に残る。
シガーを吹かしてから口に含むと、オイリーなニュアンスが強調されるとともに、蜂蜜のような香りが引き出されてくる。総体的にしなやかさよりも柔らかさが演出され、こちらも非常に心地良い。
The "Royal Household"
(以下、ティンキャップのコメントは、「ティンキャップでは」から始める)
外観はコノンと似た感じ。
それに対し、ティンキャップでは、琥珀色が全体的に出ている。端の方はやや透明に近いが、他の2つと比べると色が出ている。色調は中程度~やや濃いめで、やはり他の2本よりも1段階濃いものとなっている。ライトに照らされたグラスの中での光の反射が艶めかしく揺れる。脚も細く長い。
香りは湿った感じの熟成感があり、柔らかな木の香りと品の良いキャラメル、ややミルクチョコといった香りが立ってくる。しなやかではあるが、コノンに比べると、ブレンデッドらしい丸みのある柔らかな質感があり、そこに白っぽい花の香りが香る。それぞれの香りの要素がうまく絡み合って複雑味が感じられる。
ティンキャップでは、先ず「枯れてるねぇ」という印象。熟成した樽香とキャラメル感が香りを下支えしている構造は、先のハウスホールドと同様。枯れた感じが前面に出ているためしなやかさは譲るが、太さや広がりある。ただ、アルコール感はしっかりとあるで、芯の通ったボディそれ自体に若さも感じられる。また、ほのかな甘い香りも程良く、香りの要素がうまく纏まりあって全体にこなれた一体感がある。
口に含む。オイリーというよりヴェルヴェッティという感じ。キャラメルのフレーヴァーがアルコールの上を覆って口の中に広がる。下にあるアルコールの刺激がやや強めにも感じられる。また、蜂蜜のような甘みも印象的で、良く纏まっている。
シガーと合わせると、木の香ばしさが引き立つ。やや塩味のような軽い刺激が口の中に感じられ面白く、これが更に木の香ばしさを引き立てている。
ティンキャップでは、甘みが更にこなれている。柔らかいとかヴェルヴェッティというよりも、舌それ自体に染み込んでいくように馴染んでくる。余りにも自然すぎるというか。熟成感も充分とこなれていて、麦の香ばしさも飽くまで落ち着いている。甘みのフレーヴァーと一緒にほのかなハーブ感が鼻に抜ける。全てのフレーヴァーは一つに纏ままり、喉の奥へと流れていくのではなく、やはり優しく口の中から自然と消えていくよう。
飲後は、舌の中央にアルコールのしなやかさ、脇には柔らかなキャラメルの甘みが残り、余韻が細く長く続く。深みさえ感じる。
仕方がない。終わっているのだから。
シガーと合わせると、キャラメルやコーヒーといったフレーヴァーが立ちあがってくる。また、シガー側のハーブ感もやや立ち、バッティングするという類のものではないにしろ、それぞれの要素がそこはかとなく主張しあっている。
実はマッチングという意味では、The "Royal Household"のティンキャップが、この中では一番低い。
中々、興味深い体験。
モルトの個性も良いが、ブレンデッドの懐もちょっと居心地が良かったりする。特に、シガーとの相性でいうと、実はブレンデッドの方が奥行きがあるのでは、という可能性がみえた。
まだまだ、入り口か。





